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またたくまに月日がすぎ去り、もうすぐ父と母の命日がめぐってこようとしています。 お里は一日として亡くなった両親のことを忘れた事はありませんので、なんとかしてふたりの法事をしたいと思いました。 「おまえにはなんの働きもできない。お酒をつくって売ればいいのだけれど」 といった母親の言葉を思いだしました。 法事をするお金をかせがなければなりません。それにはまず、お酒をつくるもとのこうじをつくるお米を買わなければなりません。お里は仕事をさせてもらっている家を、一軒一軒まわって頼みました。 「両親の法事をしてやりたいのですが、お金がありませんので、お坊さんに来てもらえません。お父さんの好きなお酒をつくることならできるので、その原料の米を買いたいのです。お酒を売って、かならずお返ししますから、もとでを貸してください」 村の人はお里が孝行娘だったことはよく知っていたし、みなしごになっても正直に働いているのを見ていますので、かわいそうに思い、少しずつお金を貸してくれました。なかには、 「これはお里さんの孝心にあげる供養だよ。返さなくてもいいからね。」 といって、お金をめぐんでくれる人もありました。こうして集まったお金が三百文になりました。お里はそれをもとでにして米や瓶を買い込み、お酒をつけこみました。 両親のしていたとおり、お里はお米をむしたり、瓶につけこんだり、密封したり、瓶をあたためたりしました。そのうちこうじが発酵してきました。外から瓶にさわっても、あたたかく、中のこうじが熱をだしているのがわかります。 |